alfabethuset

デンマークの作家、J・A・オールスンの『アルファベット・ハウス』を読みました。特捜部Qシリーズ(未読ですが)で有名な著者のデビュー作だそうです。

舞台は第二次世界大戦の終わり頃。イギリス軍パイロットのブライアンとジェイムズがドイツ上空で追撃され、命からがらドイツの精神病棟へ辿り着く。そこでドイツ軍になりすまし、脱出の機会を伺う二人。精神病棟での過酷な状況から抜け出すことはできるのか…という話。

第二部からが面白い

上下巻に分かれているのでかなりのボリュームです。上巻(第一部)では主に脱走がテーマですが、ここがものすごく長いので少し疲れました。著者の父が精神科医だったらしく、精神病棟内での描写が生々しく恐怖を感じる場面もしばしば。仮病のはずが、次第に精神が壊れていく主人公たちの様子が印象的です。

下巻(第二部)からはテーマが変わって、友情と、そこに生じる亀裂や修復可能性などがメインの話になります。登場人物たちの心情やそれぞれの行動の意味、その結果、人間関係がどう変わっていくかが繊細に描かれており、考えさせられる内容です。

人と人が関わるとき、相手のことを想った行動が逆効果になることもあれば、何もしないことで亀裂が生じることもあり、かといって自分のことだけを考えて行動することがいいとも限らない。ブライアンの行動は正しいと思うし、ジェイムズの気持ちもわからなくもない。けれど、やはり何もしないことが一番よくないと思うし、それによって生じた結果は受け入れるしかないのかなと思いました。