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SF界の抒情詩人と呼ばれているレイ・ブラッドベリの『華氏451度』(新訳版)を読みました。焚書をテーマに、物事の本質を理解することの大切さを説いた作品です。

本を保有することが禁止され、昇火士(火事を消火するのではなく、逆に本や家に火をつけて燃やす仕事)が活躍する世界。ある日、主人公のモンターグ(昇火士)が不思議な少女と出会い、本や社会に対しての考え方が変わって行くという話。

人は与えられた情報だけを盲目的に信じ、自ら情報を得て考えることをしなくなった社会で、古人の知識や歴史を知るきっかけになるものとして本が禁止されています。恐ろしいのは、本を持っていることを通報されると、場合によっては家ごと、抵抗すれば家人ごと焼かれてしまうこと。

そんな昇火士の仕事が正当化されるほど、人が自ら考え行動することを抑制しようとするディストピア。人々が思考停止に陥った社会への皮肉も込めて描かれています。

『華氏451度』は1953年に書かれた作品ですが、2017年の今でも十分に共感できる内容なので、昔も今もあまり変わっていないのかなという気にさせられます。

面白かったのは、モンターグの上司であるベイティーが本に詳しかったこと。本を燃やす立場である昇火士が、この世界では一番本に触れる機会が多いというギャップがよかったです。