kinema-girl

大学時代はクラブ活動でギターに夢中になりましたが、人生を捧げる覚悟でギターに打ち込んだかというと、そんなことはなく。では、何かひとつのことを成し遂げるために学業に専念したかというと、そうでもない。

どちらもそれなりに頑張って今に繋がっているのは間違いないにしても、『少女キネマ』に出てくるアツい登場人物たちのような学生生活を送れたとは言えません。

比べることに意味はありませんが、それでも彼等の凄まじい情熱を羨ましく感じてしまうのも無理はないと思います。

『少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語』一肇(ニノマエ ハジメ)

取り憑かれたかのように映画制作に打ち込む学生と、彼が遺した映画を巡って繰り広げられる友人達の青春物語。どこか皆、古風で変わり者で、でも憎めない魅力的なキャラクター。適度に散りばめられたミステリー要素。読み手を引き込ませる文章も相まって、読みやすくて面白い小説でした。

最終章で混乱した

作者紹介の欄にラストシーンに自信ありといったコメントがあったり、本の帯でもラスト一行で泣いたというコメントが載っていたので、必然的にラストに期待してしまっていました。

話の流れで予想できる部分とそうでない部分があるのはいいのですが(ミステリーだし)、最終章を読んで混乱してしまったので、肝心なところで感動できなかったのが心残り。

謎めいた感じで余韻を残すことが作者の狙いなのかなという気もしますが、"さち"の存在についてはっきりと書いてくれた方が感動できたと思います。読解力が足りないのか、感受性が欠けているのか。

最終章の一歩手前まで、これは泣くかもと思いながらテンションが上がっていたので、混乱したことで不完全燃焼になってしまいました。

古風でアツいキャラクター

最終章のことはさておき、魅力的なキャラクターがこの小説の一番いいところだと思います。大学生なのに堅苦しい古風な口調がツボでした。それがセリフを際立たせて、アツさを増しているのだと思います。亜門が特に印象的。

400頁を超えるボリュームたっぷりの物語で、『少女キネマ』というタイトルからは想像できなかった暑苦しさがよかったです。もう一回読むとちゃんと理解できるかな。