never-let-me-go

2010年に公開されたイギリス映画『わたしを離さないで』。原作は、2017年にノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏の同名SF小説(2005年)。

1976年、人類の平均寿命は100歳を超えた。臓器提供のために育てられた子どもたちが生きる社会。大人になると"提供"の順番を待ち、およそ3回目の提供を終えると"終了"する。提供者として育てられたキャシー、ルース、トミー達の人生を描いた映画。

話の設定からして重いのですが、実際に観てみるととにかく救いがなくて重い。ズシーンと来るものがあって、決して後味のいいものではありません。

監督や原作者がこの作品を通してどういったメッセージを伝えたかったのかは定かではありませんが、命の重みや人生の意味、"提供"する側とされる側の違いなど、題材だけを残されて回答例を示してくれていない感じ。

いくら医学や科学が発展したとしても、こういう未来は来てほしくないなと思います。人そのものではなく、臓器だけ、細胞だけを生み出せる研究が進んで欲しい。

印象に残った場面は、ルーシー先生が子どもたちに真実を話す場面と、ルースが手術を受ける場面です。ルーシー先生が語る場面は少なからず救いのようなものを感じました。

ルースの手術場面は言葉にならない怖さがあり、この映画のすべてをこのワンシーンで表現しているように感じます。そして、なぜ"終了"という言葉が用いられているのか、その理由もここで明確に表現されています。


ちなみに、カズオ・イシグロ氏は制作総指揮としてこの映画に関わっているそうですが、原作から省略されている場面が結構あるようで、この映画を観ただけでは分からない部分が多くありそうです。原作を読んでみたい気がしなくもないですが、ちょっと重いかな…。

主人公のキャシー役(キャリー・マリガン)もよかったですが、やはりルース役のキーラ・ナイトレイの演技がとにかく光っていました。表情ひとつであれだけの感情を表現できるのがすごい。

トミー役のアンドリュー・ガーフィールドは『アメイジング・スパイダーマン』で有名ですね。ルーシー先生役のサリー・ホーキンスは、最近観たばかりの『パディントン』に出てくるブラウン家のお母さん。

『わたしを離さないで』は、日本でも2016年に綾瀬はるかさん主演でドラマ化されたそうです。全然知りませんでしたが、なかなか受け入れられなさそうなテーマだけに、どういった反響があったのか気になるところ。