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アガサ・クリスティーのミス・マープルシリーズ4作目にあたる『予告殺人』。

ある日、新聞広告に殺人予告が掲載された。町の人々は興味を示し、予告された場所に集まる。やがて定刻になると、銃声が響き渡り…。いたずらと思われた事件の裏に隠された真相は一体何なのか…という話。

マープルシリーズを読むのは『パディントン発4時50分』『牧師館の殺人』に続いて3作目です。共通しているのは人物相関というか、人間関係の複雑さ。登場人物がそれなりに多く、誰と誰が実はこういう関係で、そこにはこういった秘密が隠されていて…と、本文と登場人物一覧を行ったり来たりしながら読まないとなかなか理解が難しいです。

そこに慣れてくれば、次第に物語の全容が判ってきて、終盤に差し掛かるにあたって一気に盛り上がってきます。そして真相はまさかの驚きという、ポアロシリーズもそうですが、アガサ・クリスティーの特徴なのかもしれません。

人物相関図を描くのに苦労はしますが、いつも読み終える頃には楽しい気持ちになっていて、次はどのクリスティー作品を読もうかと考えているので、結構好きですね。

さて、本作は僕にしては珍しく、中盤くらいで真犯人がわかってしまいました。とはいえ、真相をすべて理解できたわけではなく、更に一捻りあったので最後まで楽しめました。遺産相続に関わる人と人との駆け引きはネタとしては定番ですが、それを殺人予告という手段でエンタメ要素を加えているのがすごい。

ミステリーを読むときはトリックよりも動機に興味があるので、"犯人はすぐにわかるがトリックがわからない" よりも "トリックはそれほど重要ではないが、人間関係や動機がわからない" 系の方が肌にあっています。

『予告殺人』にはプロローグを注意深く読めば「あれ?」と気付く仕掛けがあり、一度最後まで読み終えてからもう一度プロローグを読み返すとそれがわかるので、そのときの驚きと少し悔しい感じが最高です。

登場人物たちの会話と、(小説では想像するしかありませんが)表情がかなり重要なので、そういう意味でも、この作品はぜひ映像で見てみたいです。2007年にテレビドラマ化されているようですが、改めて映画化してくれないかな。