何年も前に買って放置していたコナン・ドイルの名作『緋色の研究』。ついに読みました!
記念すべきシャーロック・ホームズ初登場作品として、ワトスンとの出会いが描かれた作品としてあまりに有名ですが、詳細は知らないままだったので新鮮な気持ちで読めました。
ワトスンへの第一声で描かれるホームズの洞察力
安い下宿先を探していたワトスンと、家賃を折半できる同居人を探していたホームズ。そんな二人が出会ったときの「あなたアフガニスタンへ行ってきましたね?」。これから何度も見せつけられることになるホームズの洞察力を表した名場面。これだけでちょっとテンション上がりますね。
科学的な研究に没頭しているかと思いきや、一般常識であっても自分に関係ない事には無知だったり、予想以上に個性的な探偵だなと感じました。一言で言うと変な人。一方、ワトスンは思ったより普通の人でした。
「緋色の研究」の意味
よくあるミステリー小説のように、事件の名前だと思っていましたが全然違いました。緋色の研究とは、ホームズが事件を推理して犯人を特定することを芸術的に表現したものでした。
いささか美術的な表現をつかったっていいだろう?人生という無色の糸かせには、殺人というまっ赤な糸がまざって巻きこまれている。それを解きほぐして分離し、端から端まで一インチきざみに明るみへさらけだして見せるのが、僕らの任務なんだ。原題は「A Study in Scarlet」で、studyを「研究」ではなく「習作」として、「緋色の習作」と訳す場合もあるそうですが、研究好きなホームズには「緋色の研究」が合っていると思います。
※緋色の研究 第四章 p.63 より
犯人の動機を描くのに作品の半分を費やす
僕が読んだ『緋色の研究』は約200ページの本で二部構成になっていましたが、第二部(約100ページ)が犯人の動機を描くために使われていました。それこそ、いきなり違う本でも読み始めたのかと錯覚するくらい、突然、語り部も話も変わるので最初は戸惑いました。
今だったら、探偵の推理と犯人の過去を交互に描くような構成が多いように感じますが、見事にきっぱり分かれているので、わかりやすいと言えばわかりやすい。
ホームズの推理スタイル
ホームズ曰く、ホームズの推理は総合的推理とは違う、分析的推理なんだそうです。
あるできごとを順序を追って話してゆくと、多くの人はその結果がどうなったかをいいあてるだろう。彼らは心のなかで、個々のできごとを総合してそこからある結果を推測するのだ。このセリフを見て、僕が推理小説を読むときは総合的推理をしようとしているんだなと思いました。対して、推理小説に出てくる名探偵というのは、分析的推理をしているんですね。わかったようなわからないような感じですが、推測と分析は全然違いますね。
しかし、ある一つの結果だけを与えられて、はたしてどんな段階をへてそういう結果にたち至ったかということを、論理的に推理できる人は、ほとんどいない。これを考えるのが僕のいう逆推理、すなわち分析的推理なんだ。
※緋色の研究 第十四章 p.193 より
ページ数は少な目ですが、内容が濃いので読むのに時間がかかりました。構成に戸惑ったところもあって、大満足というわけではなかったですが、ようやくホームズシリーズを読めた喜びが大きいです。次は『四つの署名』を読むつもり!