『一九八四年』でおなじみ、ジョージ・オーウェルの『動物農場』を読みました。とある農場で、動物たちが反乱を起こして人を追い出し、動物たち自身で農場を経営していくという物語。そんな動物たちの姿を通して、社会主義のあり方について問題提起されています。
モデルは実在の国と革命家
マルクスによって資本主義の限界が訴えられ、労働者による革命が起き、社会主義を掲げる傾向が強まります。しかし、革命家たちも自身の権力と利益に溺れ、経済は発展しても人々の暮らしは豊かにならず、幸福度も上がらない社会ができてしまう。
そんな現実社会(今からすると歴史ですが、この作品が書かれた当初はまさに現代)を動物たちを主人公として描かれています。動物農場のモデルとなる国、革命家ももちろん実在しているため、第二次世界大戦前後の世界情勢についてある程度知っていると面白いと思います。
このあたりの経済学的な背景を知りたい場合は、ケインズの『雇用・利子および貨幣の一般理論』(まんがで読破シリーズ)がおすすめです。
正しい社会主義とは
「訳者あとがき」が秀逸なので、本編を読んだあとには必ずあとがきも読んだ方がいいと思います。本編だけを読むと社会主義への批判という印象が強いのですが、オーウェルの意図はそうではないことがわかります。
社会主義自体が悪いのではなく、独占しようとする革命家と、さらには疑問を抱きながらも声を上げようとしない動物たちにも非があるのではないか。というところまで視点を広げることが大切だと学びました。
出版にまつわる裏話
これも本編後に収録されている「序文案」と「訳者あとがき」に書かれていますが、『動物農場』の出版には相当な苦労があったそうです。しかし、いざ出版されると結果的に世界的なベストセラーになるわけですが、その理由がまた何とも言えず、なるほどなーという感じでした。
モデルとなる舞台やストーリーは異なりますが、百田尚樹さんの『カエルの楽園』も合わせて読むといいと思います。こちらは、現代社会の問題をより身近に感じられます。