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本屋で平積みされていて、思わず手に取った櫛木理宇さんの『死刑にいたる病』。元は『チェインドッグ』というタイトルらしいですが、『殺戮にいたる病』『死に至る病』よろしく改題されたそうです。連続殺人犯(シリアルキラー)をテーマとした作品です。

取り留めない学生生活を送る雅也のもとに、連続殺人犯の榛村大和から手紙が届く。立件された9件の内、最後の1件だけは冤罪だという。それを証明してほしいと言われた雅也はやがて調査を行うことにするが…。次第に判明する事件の真相と、榛村大和に魅せられていく雅也。着地点の見えない物語はどこへ向かうのか…という話。

サイコパスの描写がすごくて不思議な魅力がある

連続殺人犯の中には不思議な魅力を持った人物がいることがあり、作中でも多くの連続殺人犯が紹介されています。主要人物の榛村大和はまさにそういったタイプの連続殺人犯として描かれており、何とも言えない魅力を持ったキャラです。

良心を持たない、いわゆるサイコパスと言える存在で、伊坂幸太郎さんの『死神の浮力』に出てくるサイコパスの解説を思い出しました。

 サイコパスは25人に1人の割合で存在し、残りの24人には良心がある。しかし、ミルグラムの実験によると、その内の6割にあたる14人はサイコパスの指示に従ってしまう。さらに、少数派よりも多数派を有利とする合理性が働くとすれば、残りの10人の内、5人はサイコパス側につく。従って、20対5になり、サイコパス側が有利になる可能性がある。

といったもので、榛村大和に関わる人たちが次第に彼に惹き込まれていく様はまさに上記のとおり。

『死刑にいたる病』では、雅也という主人公を通して、サイコパスに取り込まれていく恐怖や負の連鎖といったものを巧みに描かれています。二転三転する展開にミステリーとしての面白さもあり、うまく言い表せない不思議な感覚を味わえる作品でした。

意味深なプロローグと、想像を掻き立てるエピローグが良くて、最初から最後まで気が抜けません。それでも内容の重さの割に読み疲れるという感じはなく、構成力の成せる技なのかなと思いました。おすすめです。

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