伊岡瞬さんの『代償』。あらすじを見て『死刑にいたる病』と似たような印象を受けたので読んでみましたが、同じサイコパス物でも全然違います。
ノストラダムスの予言が外れた1999年。ある事件をきっかけに、遠縁の同級生・達也と同居することになった圭輔。そこから圭輔の世界の終わりが始まる。やがて過酷な思春期を乗り越え弁護士になった圭輔のもとに、冤罪で逮捕されたから弁護して欲しいと達也から連絡が入る。断ることもできず、達也に振り回され続ける圭輔。彼はどういった行動を取るのか、"代償"を払わせることができるのか…という話。
これでもかという程の嫌なヤツ
物語の終盤に差し掛かるまで、ずっと胸くそ悪い状態が続きます。いろいろなミステリーを読んで来ましたが、これ程までに嫌なヤツは居なかったかもしれません。まさに著者の技量というか、そこが狙いだと思うのでお見事の一言。
同じサイコパス物でも、『死刑にいたる病』は不思議な魅力があって読了感もいい方だったのに対し、『代償』はいわゆるイヤミスです。それがダメという話ではなく、イヤミスとして物凄い作品だと思います。実際、嫌悪感を抱きながらも一気に読ませる力がありました。
ただ、イヤミスはイヤミスで、やはりいい気分にはならないと思うので、あまりおすすめはしません。代償というにはスカッとしない感じで、いっそのことユーモアに走ったラストでもよかったのかなーと思いました。まあ、決してそんなノリが通用するタイプの内容ではないですが。