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経済学者が探偵役という、石川智健さんの『エウレカの確率 よくわかる殺人経済学入門』(原題は「経済学捜査員とナッシュ均衡の殺人」)を読みました。『エウレカの確率 経済学捜査員 伏見真守』に次ぐシリーズ2作目です。

製薬会社で内部告発の文書が見つかり、次いで研究員が死亡。警察によって事件性はないと判断されるが、経済学者の伏見は殺人事件と断定し調査を進める。はたして行動経済学で事件は解決できるのか、真相は…という話。

どちらかと言うと好きな方なんですが、今回は期待が大きかった分、気になることが多すぎて文句ばっかりの感想になってしまいました笑。

伏見捜査官が何度も同じことを言う

捜査官の立場からすると、会う人会う人に自己紹介をしたり、感情的殺人と合理的殺人について説明したり、「まだ確証がないので言えません」と勿体ぶったり、毎回説明が必要なことはわかります。

でも、読者の立場からすると、そんな説明は一回でいいんですよ。何度も同じ内容を読まされるのは苦痛でしかない。それによって、伏見捜査官が回りくどい面倒な性格というイメージができてしまって勿体ない。作品全体のテンポも悪くなって(前半で何度も同じことを説明するので、後半が駆け足になっている)残念でした。

伏見捜査官がいつの間にか情報を掴んでいる

特に記載がないのに、いつの間にか伏見捜査官だけが掴んでいる情報がいくつかあり、フェアじゃないなーと思いました。じっくり考えながら読めばわかるのかもしれませんが、推理する楽しみはあまり感じられず、経済学と犯罪捜査の関わりを楽しむ本だと思います。

なんというか、語り部は伏見捜査官ではないのに、伏見捜査官目線(著者が伏見捜査官になりきっているような)で書かれている印象を受けます。

最後がすごく駆け足

経済学の説明が多いのと、伏見捜査官がいつまでたっても「まだ確証がないので言えません」とか言うので、事件解決と犯人の動機説明などがすごく駆け足でした。僕はトリックよりも動機の描写がしっかりしている作品の方が好きなので、その点でも物足りなさを感じました。文庫版で350ページくらいの本でしたが、内容的には200ページくらいで収まりそう。

それでも、全体的にストーリーは面白いし次作も読みたいなと思うので、構成(というか編集?)の問題だけなのかなーと思います。とりあえず、次作も文庫化されたら読む。素材はいいのに。

いや、ほんとに伏見捜査官のキャラクターは好きだし面白いんですよ。