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ミステリー小説が叙述トリックなら、ミステリー漫画は視覚トリック。金田一少年の異人館村殺人事件は、そんなミステリー漫画ならではの面白さを最大限に感じさせてくれる作品。

高校の同級生・若葉の結婚式に参加するため、異人館村へ行く金田一と七瀬。館で偶然、首のないミイラを発見する二人。何やら不穏な空気が漂う中、村のしきたりに沿って花嫁は一人教会へ。そして、恐怖の連続殺人事件が始まる…という話。

"はじめに" で注意書きされていますが、この事件で使われるトリックは、島田荘司さんの『占星術殺人事件』で使われているトリックと同じものだそうです。僕はそちらは未読だったので、普通に『異人館村殺人事件』は楽しめました。

ただし、『占星術殺人事件』をこれから読むつもりなら、この漫画は読まないほうがいいかもしれません。先に占星術を読んでから異人館村を読む場合は、このトリックを視覚的に表現する面白さを味わえるので、それなりに楽しめそうですが。

連載当時、この件についてはいろいろ話題になったようですが、オマージュを込めて視覚トリックとしての表現にチャレンジしたのかなと思います。想像です。

もちろん、事件に使われているトリックはそれだけでなはく、いわゆる "密室殺人" "顔のない死体" "一人二役" といった定番要素も相まって、読み応えたっぷりの事件です。

視覚トリックといえば、原作者が File01(オペラ座館殺人事件) の "まえがき" で書かれているように、金田一が写真の違和感に気づく場面がよかったです。こういう場面こそ、小説とは違うミステリー漫画の良さというか、何度もページを行ったり来たりして絵の細かな部分を見るのが楽しい。

事件の内容はなかなか凄惨で、後味はあまり良いものではありませんが、金田一少年の事件簿の中でもこれはかなり印象的な事件だと思います。