綾辻行人さんの館シリーズ第6弾『黒猫館の殺人』。新装改訂版が出ているのはここまで。
火災で重症を負い、記憶を失った鮎田冬馬。彼の依頼を受けた江南は、鮎田の記憶を取り戻す手助けをすべく、北海道へと向かう。鮎田が管理していた「黒猫館」で待ち受けていた、驚きの真実とは…という話。
読み終えた率直な感想は「その手があったか!」。
シリーズ6作目ともなると、ある程度のパターンができてきます。読み手としてもあれこれ想定しながら読むので、途中で犯人がわかったり、隠された謎に気づいたり、次第に驚きが薄れて行っても仕方がないもの。
それでも、毎回新しい仕掛けがあり、その発想はなかったわーと楽しませてくれるのが館シリーズのいいところ。今回もしてやられました。あとがきにもありましたが、8割わかるのはいいとして、残りの2割はわからない。その絶妙なバランスが凄いです。
決してアンフェアではなく、ちゃんと読み返せばそのとおり書いてある(しかも堂々と)。でも読んでいるときには気づけない。なんとなく引っかかってはいたけど、なんでわからなかったんだろうと思わせるのが本当にうまいなと思います。
時計館から繋がっている部分もあり、シリーズを順番に読んでいる身として満足度の高い作品でした。前作の感想でも少し触れたように、小説ならではの魅力(つまり叙述トリック)が満載で、これもまた映像化できないという共通点を持っているので、そこも含めてよかったです。
強いて言えば、登場人物の一人の"本名"にも仕掛けがあるのかなと思っていたので、そこだけ拍子抜けでした(考え過ぎ)。
さて、次はシリーズで最も長い超大作『暗黒館の殺人』(全4冊)。ただ、黒猫館から暗黒館までは8年かかったらしく、あとがきでも"シリーズを順番に読んでいる人はある種の覚悟を持って読んでほしい"と書かれているので、少し躊躇っています。
先に『霧越邸殺人事件』を読んでみるのもいいかもしれない。どうしようかな。