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古典ミステリーの名作、ガストン・ルルーの『黄色い部屋の秘密』。密室を題材にした作品として高く評価されているらしく、最近読んだ推理小説の中でも、『黄色い部屋の秘密』の話が出てくるものがいくつかありました。

ガストン・ルルーといえば『オペラ座の怪人』で有名なので、『黄色い部屋の秘密』の著者だと知らずに驚きました。

ある日の夜、「黄色い部屋」で寝ていた令嬢が悲鳴を上げる。すぐに駆けつけた父親たちが扉を破って部屋に入ると、そこには倒れた令嬢の姿だけがあった。部屋は荒らされ、壁には血痕があるにも関わらず、犯人の姿はない。「黄色い部屋」は完全な密室。この謎多き事件に若き新聞記者、ルールタビーユが論理的思考を持って挑戦する…という話。

古典ミステリーの教科書的な構成?

探偵の友人(著者)が語り部で、日記や調書を元に事件を語り、事件解決に必要な情報はほぼ完全に網羅されており、探偵は序盤で真相を解明しているのに最後の最後まで勿体ぶって教えてくれない、という構成です。

最近、コナン・ドイルやヴァン・ダインの作品を読みましたが、構成がよく似ています。特にヴァン・ダインに似ている気がしましたが、どうやらガストン・ルルーの方が20年くらい先だそうです。日本人作家だと、横溝正史の金田一耕助シリーズが似ていると思います。

『黄色い部屋の秘密』の知名度と、ガストン・ルルーによって発表された年代を考えると、どれだけ後世の作家に影響を与えた作品なのかをうかがい知ることができ、改めてすごい作品なんだなと思いました。

ただ、やはりこの手の作品特有とも言えそうな、探偵の焦らしが読んでいてしんどい笑。テンポも決してよくはないので、500ページもあるとなると流石に中だるみしてしまいました。それでも後半の展開には興奮を隠せず、読了感はよかったです。

黄色い部屋以外にも秘密がいっぱい

密室のトリックに特化した内容かと思いきや、登場人物たちに隠された秘密が多く、人間関係や心情を推測しながら読むのが楽しかったです。探偵役のルールタビーユにも秘密があったのが意外で驚きました。『黒い貴婦人の香り』の新訳版が出るとすれば是非読んでみたい。

それにしても、この作品がおよそ100年も前に書かれたとは信じられない。やはり名作と言われる作品は読んで見るものですね。その作品によって確立されたこと、影響を受けた作家、モチーフになっている作品など、そこから派生して多くのことを学べるので楽しい。