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2017年公開の『マンチェスター・バイ・ザ・シー』を観ました。主演のケイシー・アフレックがアカデミー賞主演男優賞を受賞した作品です。

ボストンで働くリー・チャンドラー。ある日、兄のジョーが倒れたという知らせを受け、故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーへ戻ることに。だが、病院へ着いたときには既に兄は亡くなっていた。そして、ジョーの息子パトリックの後見人になることを知らされるリー。やがて、悩みながらもパトリックと向き合う彼の壮絶な過去が明らかになり…という話。

悩みながらも現実に向き合う姿

オープニングとエンディングにも出てくる、リーとパトリックが釣りをする場面。後見人になる前と後では当然関係性も違うわけですが、パトリックが幼いころから青年になるまでの二人の距離感の移り変わりが、釣りをする場面からも伝わってきます。重いストーリーなので、感動や共感とはまた違うのですが、しんみりと染み渡るような感じです。

チャンドラー一家のどの登場人物に焦点を当てて観るかで印象も変わってきそうです。重い過去を背負いながらも、逃げずに現実に向き合うリーの姿には、どこか励まされる気持ちがします。

突然父親を亡くし、叔父が後見人になることに戸惑いを隠せないパトリック。友人たちと同じように平凡な学生生活を楽しもうとしながらも、隠しきれない痛みやストレスに葛藤しているような姿は応援したくなります。

一方、リーの元妻は新しい家族を迎えて幸せを掴もうとしながらも、リーへの複雑な感情を整理しきれず、最も苦しんでいるようにも見受けられました。

いろんな立場の登場人物の心情が痛いほどに描かれている作品ですが、共通しているのは誰もが過去から逃げているわけではなく、現実と向き合い、一歩ずつ前に進もうとしているところです。

こういう、しんみりと感傷に浸れる映画もたまにはいいですね。休日に一人で観るのがおすすめです。

ケイシー・アフレックの心情を描く演技

前に『ジェシー・ジェームズの暗殺』を観たときにも思いましたが、微妙な心情を表現するのがすごく上手い役者さんだなと思います。

リー・チャンドラーは孤独で無表情で、常に寂しさが漂う感じなのですが、その空気感が映画全体の雰囲気と合っていてよかったです。次第に過去が明らかになるにつれ、その原因がわかり、昔の明るい表情とのギャップがまた切ない。

調べて初めて知りましたが、ケイシー・アフレックは『オーシャンズ11』にも出演していたんですね(ドライバー役の兄の方)。大好きな映画なのに俳優の名前を覚えていませんでした。また見てみよう。

ちなみに、ケイシー・アフレックの兄は同じく俳優のベン・アフレックだそうです。