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佐藤航陽さんの『未来に先回りする思考法』を読みました。『お金2.0』でおなじみのメタップス社代表の著書です。

人はいつの時代も未来を見誤る傾向にありますが(例えばiPhoneが発表された当初は、そんなもの流行るわけないと言われていたように)、思考を工夫することで先見性を発揮することは可能であるとし、その思考体系を具体的に解説されている本です。

特に重要だなと思ったポイントは以下です。
  • 物事の変化を点ではなく線で捉えよう
  • 変化にはパターンが存在する
  • テクノロジーの進化には必要性が伴う
  • 中央集権的なハブ型の社会システムは分散型にシフトする
テクノロジーの進化には必要性が伴う

日本でイノベーションが起きにくいのは、差し迫った必要性がないからとし、シンガポールが急速に発展している理由や、アメリカがこの原理をうまく利用していることなどが書かれています。

また、別の章に出てくる、中国がGoogleやFacebookを規制し、自国の企業を発展させたことで、今やITでアメリカと競争できる可能性を秘めた唯一の国になっているという話も、必要性の原理をうまく利用していると考えられます。

日本のIT業界といえば、アメリカのシリコンバレーで作られたサービスが数年後に日本に渡ってきて類似サービスが一気に増える、という流れがお馴染みなので、そういう点でも日本と中国の違いというのが見えてきます。

必要性の原理は、日常生活に落とし込んで考えると理解しやすいです。例えば、身だしなみを整えることについて、僕は休日にどこにも出かける予定がなければ、わざわざ髪をセットしたり服を着替えたりはしません。でも急に外出の予定が入れば、(面倒だなと思いながらも)身だしなみを整えます。これも必要に迫られたからと言えます。

なかなか部屋の掃除ができないときに、人を家に招く予定を立ててしまえば掃除が捗るというのも同様で、これを自発的に行うことが必要性の原理を利用するということかなと思います。やる気スイッチの入れ方とも言えるかも知れません。

中央集権的なハブ型の社会システムは分散型にシフトする

インターネットの普及により情報へのアクセスが用意になり、Amazonや楽天といったECが発展したことや、ビットコインに代表される仮想通貨のことにも触れられています。

要はテクノロジーがさまざまな境界線を溶かすという話なのですが、これも自分の仕事に落とし込んで考えると面白いです。

僕はWebディレクターの仕事をしているので、クライアントと、デザイナーやエンジニアといったさまざまなメンバーの間に立って、それぞれのコミュニケーションを円滑にするためのハブとして動くことが多いです。

しかし、それもハブ型から分散型にシフトする流れにあるとすればどうなるでしょうか。例えば、ツールを例に取ってみても、2017年に正式発表されたAdobe XDは、メンバー間の溝を埋めるコミュニケーションツールとして注目が集まっています。

Adobe XDを使うことで、今まで各工程においてばらばらだったツールをまとめ、ハブとしてのディレクターが交通整備をしなくても円滑に作業が進む環境を整えられることが期待されます。(参考 : 現場で必要なデザインツールの見つけ方
話しが大きく逸れましたが、これも一つのハブ型から分散型への変化だと思うのです。

このハブ型から分散型へのテーマは、仮想通貨やフィンテック、シェアリングエコノミーについて書かれている同著者の『お金2.0』の方が詳しそうなので、こちらも読んでみます。

他にも、『未来に先回りする思考法』には合理性の話(いま、『予想どおりに不合理』を読んでいて、この手の話にとても興味がある)も出てきます。システムもまた必ずしも合理的でないという内容が印象的でした。

読みながらいろいろと考えることが多い良本でした。ちょくちょく読み返そうかなと思います。