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太宰治の名作『人間失格』。なんとなく読んでみたら、思わず夢中になって一気に読んでしまいました。それにしても、ふと思い立ったときにパッとダウンロードして(しかも無料)古典文学を読めるなんて、いい時代ですね、しみじみ。

噂に違わぬ廃人っぷり

「恥の多い生涯を送って来ました。」という書き出しが有名ですが、これは「第一の手記」の冒頭で、本は第三者視点の「はしがき」から始まっていました。既に「はしがき」から、負のオーラが漂ってきます。

人に対する恐怖心や不安、処世術など、共感できる部分もあり、その一つひとつが強烈でなんともいえない不気味さと痛みがあります。とはいえ、これだけだと別に人間失格とか廃人とは思いません。

凄かったのはその没落ぶり。お酒に溺れて、ドン引きなまでの女性遍歴に、薬で中毒になって正真正銘の廃人になるわけですが、そういう弱さを人は持っているという事実に感動すら覚えます。

そうして辿り着いた真理が「ただ、一切は過ぎていく。」というのが切ない。

好き嫌いははっきり分かれそうですが、これだけ有名な作品になっているということは、作中で描かれる人間の弱さや闇の部分が少なからず共感され支持されているということだと思います。

読点「、」が多い文章

とにかく一つの文章が長いことに驚きました。もういいだろうってくらいに読点「、」で繋がれることもしばしば。かといって、読みづらいかというとそうではなく、著者の心情や性格がにじみ出ているようで、逆に効果的に感じるから不思議です。話し言葉なので余計にそう感じるのかもしれません。

ちなみに、『人間失格』は太宰治にとって完結している最後の作品で、その内容とタイミングから「遺書」という解釈もあるようです。しかし、太宰治は小説のプロットに力を入れる人だったらしく、この作品を書いているときは、そんなつもりはなかったのかなという気もします。

太宰治作品だと『走れメロス』は読んだことがあるので、次は『斜陽』を読んでみます。