あさのあつこさんのSF超大作『NO.6』。全10冊とかなりのボリューム。
選ばられた者(エリート)だけが住むことを許され、犯罪もなく何不自由なく生活ができる理想都市「NO.6」。NO.6に住む紫苑と、NO.6から外れた地区に住むネズミが出会い、度重なる困難を乗り越えながら理想都市に隠された真実に迫るSFファンタジー。
理想都市(ユートピア)は完璧なのか。一部の人にとってではなく、誰にとっても理想的な都市。科学だけではなく、"人間らしさ"がある世界。答えのない難解なテーマに挑む少年の姿に心打たれる作品です。
紫苑、ネズミ、イヌカシなど、登場するキャラクターが魅力的で、感情移入がしやすい。「住んでいる場所が違う」という、この作中世界では最も大きな違いがありながら、同じ目的のために協力しあい(事あるごとに衝突しながら)進んでいく様はテンションが上がります!イヌカシが特にいい。
長い話ですが、途中で中だるみすることもなく、最後まで楽しく読めました。
最近、こういうテーマの小説を読むことが増えてきましたが、ユートピアとディストピアは表裏一体だなとつくづく思います。一億総監視社会なんて言葉もあって、それに反対する人も当然いて、誰にとってもいい社会というのはなんだろうと考えるとキリがないですね。
それには"正解"はなくて、試行錯誤しながら軌道修正を続けていくしかないように思います。これが絶対正しい、これ以外は認めないとなった時点で、その社会はもうディストピアなのかもしれないなと思いました。