西尾維新の忘却探偵シリーズ『掟上今日子の色見本』を読みました。前々作の旅行記から探偵としての立ち位置に変化がついていて、怪盗、容疑者と来て今回は被害者です。
オフの日を狙って、何者かに誘拐されてしまった掟上今日子。事務所にかかってきた脅迫電話を受ける親切守。要求された身代金は十億円。彼はお金を用意することができるのか、無事に今日子さんを救い出すことができるのか…という話。
隠館厄介に次ぐ重要キャラのポジションを欲しいままにしている(かどうかは知らないが)親切守が大活躍しています。隠館厄介との絡みもあって、前作までの話を読んでいる身として、その辺りも楽しめてよかったです。逆に言うと、今作から読み始めるとちょっと設定がわからなくていまいちだと思います。
ここのところ、依頼を受けて事件を解決するタイプのストーリーとは違ってきていて、忘却探偵ならではの設定や捜査方法が際立ち、それが面白さを増しているように感じていました。が、今作はちょっと無理がある(忘却探偵なので当たり前ですが、それでもちょっと無理がある)印象を受けました。
掟上さんの設定というより、親切守のカンが良すぎることに対する違和感かもしれません。思わずツッコミを入れながら読んでしまいました。おそらく、そこが狙いかと思われます。
少しずつ掟上今日子の過去に迫ったり、伏線を回収する方向に向かっていると思われますが、次回は久しぶりにミステリー感満載の王道ストーリーを期待したいです。予告されているタイトルは『掟上今日子の五線譜』。