
西尾維新の忘却探偵シリーズ『掟上今日子の乗車券』。1作目の備忘録から読み続けて、かれこれもう11作目。まだまだ面白さは健在です。
護衛の親切守をお供に旅行に行くことにした掟上今日子。名探偵らしく、行く先々で事件に巻き込まれ(はたまた引き寄せ)ては、最速で解決して行く。眠るごとに記憶がリセットされる雇い主に振り回される親切守は、無事に今日子さんを連れて旅行から帰ることができるのか。そして、営業活動と称した旅行の真の目的は…という話。
行きの電車や旅先のホテルなど、行く先々で発生する5つの事件がそれぞれ章立てになっている構成。5つとも、探偵にとってはあまり重要ではない "動機" に焦点を当てた事件になっており、証拠やトリックよりも動機に興味がある僕にとっては非常に面白い内容でした。
中でも、仲のいい兄妹の事件(2つ目の事件)や、親切守が豚呼ばわれされる水上飛行機の事件(4つ目の事件)がよかったです。
ミステリーを書くときはトリックよりも動機が難しいという話を聞いたことがありますが、理解不能なものからなるほどと唸らせるものまで、人の真意なんて誰にもわからないことを(そしてそれを考える面白さ)をうまく表現した作品だなと思います。
ちなみに、前巻の『掟上今日子の色見本』で予告されていた『掟上今日子の五線譜』は、本作の巻末にプロローグだけ収録されており、次巻が五線譜の本編になるようです。親切守と隠館厄介の共演もありそうで、なかなか楽しみ。