psychopath

脳科学者 中野信子さんの『シャーデンフロイデ』が興味深い内容だったので、その流れで『サイコパス』も読んでみました。

ここ数年で耳にするようになってきた「サイコパス」という言葉。いわゆる良心を持たない人たちのことを指しますが、この本ではサイコパスの具体的な特徴、サイコパスが生まれる原因、サイコパスとの共存について、といった内容が書かれています。

サイコパス = 犯罪者というイメージがあるのは事実だと思いますが、サイコパス = 犯罪者と考えるのは危険で、実際には犯罪を犯さないサイコパス、それこそ普通に日常生活を送っているサイコパスも多く存在します。大切なのは、サイコパスに対する偏見を持たず、うまく共存していく方法を探ることだそうです。

サイコパスの特徴

まず、サイコパスの特徴について簡単に書くと、以下のような点です。

  • 外見や話し方が魅力的
  • 恐怖や不安、緊張を感じにくく、堂々としている
  • 多くの人がためらいがちなことを平然と行う
  • 常習的に嘘をつく
  • 共感性が低い

本書ではより具体的に他にもいくつか書かれていますが、自分の周りにいる人で思い当たるとすれば、「話し方が魅力的」「堂々としている」あたりでしょうか。実際、これだけだと当てはまる人は多いと思います。ポイントは、「ためらわない」ところと「共感性が低い」ところでしょうか。

サイコパスは他人に共感することはほとんどないが、他人の感情を理解することは得意だそうです。そして、自分の損得にのみ関心があり、自分にとってメリットがあると判断した行動をためらいなく行えるので、超合理的な人物と言えるようです。

こういった特徴が、いわゆる良心を持たないというイメージにも繋がるのですが、その原因は脳の構造的な部分にあるようです。詳しくは書きませんが、脳の「扁桃体」や「前頭前皮質」といった部分に異常があると、感情が欠如したり反社会的な行動に出やすい傾向があることが研究でわかっているそうです。

つまり、サイコパスがいかにして生まれるかに関しては、先天的な要因(遺伝による)が強いと言えます。ただ、それだけではなく、環境的な要因も影響することが研究されており、一概に判断はできません。

また、先天的な脳の異常によりサイコパスの特徴を持っている場合、それを治す(わかりやすい話に言い換えると、犯罪を犯して捕まったサイコパスを更生させること)は難しいことも研究でわかってきたそうです。

ここまでの内容だとやはりあまりいいイメージはないかもしれませんが、第4章で詳しく書かれている「サイコパスと進化」がとても興味深かったです。

サイコパスは人類にとって必要だった

サイコパスはおよそ100人に1人の割合でいるとされており、少数派です。しかし、いつの時代にも存在し、現代でも淘汰されずにいることを思うと、サイコパスは人類にとって必要な存在とも考えることができるようです。

ためらいなく合理的な判断ができるので、危険を顧みず率先して行動するリーダー的な存在になり得ます。ということは、歴史上のあらゆる革命の中心には、サイコパスの力が大きく関わっていたと考えることもできそうです。

近年のIT業界について考えてみても、凡人には到底できないような決断を信じられないスピードで実行し続ける経営者が世界を牽引しているように見えます。本書でも一例として、スティーブ・ジョブズの名前が挙げられていました。

また、『シャーデンフロイデ』に書かれていましたが、人には集団の中でルールを破ったり目立つ行動をする人を排除することに快楽を覚える本能的な感情が備わっています。その方が合理的で、集団生存率を上げるために効果的だそうです。そこで、サイコパスが一役買ってきたという見方もできるわけです。

まずは偏見をなくすことから

最近、サイコパスが登場する小説を読んでいたこともあり(『死刑にいたる病』と『代償』はそれぞれ違うタイプですが、どちらもサイコパスの特徴をうまく捉えた人物が登場します)、正直あまりいいイメージは持っていませんでした。

しかし、本書を読んで、そういった特徴を持っているからといって必ずしも反社会的であるわけではないこと(むしろ普通に日常生活を送っている方が圧倒的に多い)、人類の進化を振り返ると、サイコパスが牽引してきたとも考えられることを知れてよかったです。

まずは、自分の中にあった偏見をなくしていきたいなと思いました。サイコパスという表現を耳にする前から、なんとなくそういった人たちが発するオーラって感じたことありますよね…?そういうときに少し身構えてしまう自分がいるのですが、それは必ず相手に伝わっていると思うので、気をつけようと思います。


余談ですが、ウィキペディアを見るといろいろ載っていますね。

サイコパスは病気ではなく、日本では反社会性パーソナリティ障害と称されている。
サイコパスの多い職業は、CEO、弁護士、ジャーナリスト、新聞記者、外科医 など。
チェックリストは存在するが、専門家が使う場合でも複雑であり、チェックリストで自分や身近な人を診断してはいけない。

参考 : 精神病質 - Wikipedia