ピエール・ルメートルのカミーユ警部シリーズ三部作の完結編、『傷だらけのカミーユ』を読みました。このシリーズは一作読む度にすごく気力と体力を消耗するので(それだけ作品の持つ力がすごい)、『その女アレックス』から時間がかかりましたが、ようやくシリーズ制覇です。
恋人ができ、日常を取り戻したかに見えたカミーユ警部に新たな悲劇が襲いかかる。ある日、彼女が強盗に襲われ瀕死の重傷を負ってしまう。突然の事態に動転しつつも、事件を担当しようとするカミーユ。執拗に彼女を狙う強盗。その狙いは何なのか、カミーユは彼女を救うことができるのか…という話。
原題は『SACRIFICES』(犠牲)。邦題の『傷だらけのカミーユ』もなかなか良いなと思いますが、本作品のテーマは原題のとおり "犠牲" です。
邦題に引っ張られて、カミーユはまたどんな酷い目に遭うんだ…という視点で読んでいたので、原題に目を向けて読んでいたらまた少し印象も違ったのかなと思います(『悲しみのイレーヌ』もそうだった)。
ちなみに、このシリーズの時系列は『悲しみのイレーヌ』→『その女アレックス』→『傷だらけのカミーユ』で、完全に続き物の話です。なので、順番に読むのがオススメです。
それぞれの犠牲
登場人物たちのいろいろな犠牲の形が描かれています。犠牲を払うということはその代償に大きな何かを失うということでもあり、それぞれが一体何のために犠牲を払い、それによって得たものは失ったものよりも大きかったのか、といったことを読了後に考えてしまいました。
読んでいる最中は例によって、予想外に進む話の展開についていくのがやっとで、そんなことを考える余裕はまったくなかったですが。
一つ思うのは、カミーユが得たものはとても大きく、ようやく彼は自分のために生きることができるようになったんじゃないかな、ということです。カミーユにはぜひとも穏やかな生活を送ってほしい。
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