schadenfreude

『シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感』を読みました。脳科学者である中野信子さんの新書です。

シャーデンフロイデとは、他人の失敗を喜ぶ感情のことで、客観的に見ると不快に感じるような(自分にはそんな感情はないと言いたくなるような)感情です。そのシャーデンフロイデについて、オキシトシンというホルモン(幸せホルモンとも呼ばれる)が関係していること、誰しも持ち合わせている感情であることが解説されています。

ログミーの記事(ネットで誰かを吊し上げて叩くと快感が得られる–脳科学者・中野信子氏が解説する「シャーデンフロイデ」という感情)がきっかけで、シャーデンフロイデに興味を持ちました。この記事を読むだけでも面白いです。

いろいろな側面から、シャーデンフロイデという感情が起こり得る原因について詳しく書かれています。一貫して言えることは、人が集団の中で生き残るために本能的に必要なことだということです。

集団で生活をする以上、その集団を脅かすような存在(ルールを破る人や目立つ行動をする人など)がいると、排除することが正義であるという考えにいたるわけですね。

さらに、集団の中にいると多数派に身を寄せることが保身になるため、本当はよくない、違うと思っていたとしても多数派の意見に合わせてしまうのもまた、合理的なことと考えられます。

従って、この感情に起因する問題を根本的に解決することは難しいのかもしれません。できることは、そういった感情が誰にも存在することを理解して認め、自制できるなら自制することでしょうか。

逆に、自制するどころか、行き過ぎた正義(オーバーサンクション)や愛といったものに姿を変え、(自分ではそんなつもりではなく)人を傷つけてしまうこともあるという事実はなんとも難しい問題です。

ここ最近、Twitterでインフルエンサーと呼ばれる人たちが、匿名アカウントを量産してまでバッシングしてくる人が理解できないと呟いていることをよく見かけます。まさにこの答えが本書に書かれています。

Twitterはこういった投稿が目に入りやすい傾向にあるため、客観的に見て気になったことがある方は『シャーデンフロイデ』を読むと面白いと思います。

上述したとおり、人の本質とも言えることなので、シャーデンフロイデに起因する問題を根本的に解決することは難しいと思いますが、「シャーデンフロイデは誰しも持ち合わせている」「愛と正義が人を不寛容にする」。こういったことをまずは事実として受け入れることが重要だなと感じます。一番恐ろしいのは、やはりそういった事実から目を背けて思考停止に陥ってしまうことです。

同著者の『サイコパス』も気になるため、こちらも読んでみようと思います。

余談ですが、2017年にタモリさんの「LOVEさえなければPEACE」が話題になっていたことを思い出しました。(参考 : タモリさんの「戦争が無くならない理由」に鳥肌が止まらない