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綾辻行人さんの館シリーズ第5弾『時計館の殺人』。シリーズの中でも評判がよく、『十角館の殺人』の次に名高い名作。

出版社に勤める江南は、オカルト雑誌の取材で「時計館」を訪れる。館に棲む亡霊と接触するために開かれる交霊会。姿を消す霊能者。鳴り響く時計の鐘。それは恐ろしい殺人事件の幕開け…という話。

上下巻に分かれているだけあって、壮大な物語でした。

どうしても館の構造に興味が行きがちですが、こと時計館に関しては、この館でなければならない、この館を建てた当主の想いが強く反映された(おそらくそういう意味ではシリーズ随一)作品だと感じました。いつもはあまり気にしないトリックに唸らされたのもそのためだと思います。

あとがきで触れられていましたが、この作品は「時計館」という舞台を先に決めてから作られたそうです。なるほどなー。また、解説は古典部シリーズでお馴染みの米澤穂信さんで、時計館に対する熱い想いが語られていてよかった。


ところで館シリーズには、建築家・中村青司に島田潔という共通点がありますが、それ以外にもシリーズを通して共通する大きな特徴があります。

物語のヒントにもなるので詳しくは書きませんが、その特徴こそがミステリー小説の魅力を最大限に引き出し、小説ならではの面白さを存分に味わわせてくれます。

今作でももちろんその特徴ははっきりと現れており、それこそが綾辻氏のずば抜けて凄いところだなと思います。一歩間違えば拍子抜け。二度は通用しない。そんな大胆な手法で楽しませてくれるのがいいです。

余談ですが、シリーズ物なので順番に読むに越したことはありませんが、バラバラに読むとしても時計館よりも迷路館を先に読んでおいた方が楽しめます。


少し休憩しようか、このまま読み進めるか迷うところですが、次作は黒猫館。気になるタイトルではあります。