久しぶりのSF小説です。フィリップ・K・ディック作品の中でも人気が高いらしい『ユービック』。裏表紙のあらすじでネタバレしていると聞いていたので、そこは読まずに予備知識ゼロで読んでみました。
プロダクションを経営するランシターは、予知能力者を狩るべく、ジョー・チップやパット・コンリー等とともに月へ向かう。そこで爆撃を受け、ランシターは死んでしまう。ジョーたちは更に「時間退行現象」に巻き込まれ、次々と謎の現象に遭遇する。敵はいったい誰なのか、時間退行を止めることはできるのか。そして、キーとなる "ユービック" とは一体何なのか…という話。
『マイノリティ・リポート』でお馴染みの予知能力者(プレコグ)をはじめ、時間退行現象、死体を凍結して精神のみを保つ半生命など、SF感満載な設定がたくさん出てきます。
敵の正体や目的、章の区切りごとに出てくる"ユービック"についてなどミステリー要素が強いので、SF的な設定を細かく理解しようとするよりも、大まかなストーリーを掴んで謎解きしながら読むと面白いと思います。
何が現実かわからなくなる "ディック感覚" がすごく、いまどの時代が舞台で、誰が生きていて誰が死んでいるのかよくわからなくなりました。それでも、諸々の謎は一応解明されるので、さっぱりわからないまま終わるといったことがなくてよかったです。
ただ、作品のテーマや著者のメッセージなどはやはりよくわからず。何となくの雰囲気だけを味わった感じです。時間が戻ったり、過去を変える能力者がいたりするので、"いま起きていることは正しいとは限らない"、ということだと思いますが。
本編を最後まで読んでから裏表紙のあらすじを読んでみると、確かにこれはネタバレですね。ミステリー的な楽しみがなくなってしまうので、やっぱりここは読まずに本編に入ったほうがいいと思います。