『氷菓』で話題の米澤穂信さんの古典部シリーズ。まだ文庫化されていない『いまさら翼といわれても』を除いてすべて読みましたが、一番のお気に入りは『クドリャフカの順番』です。
古典部シリーズを知ったのは、2012年にアニメ化された『氷菓』を観たのがきっかけ。高校に纏わる様々な事件を古典部のメンバーが解決する学園ものミステリーで、折木奉太郎の性格や福部里志のキャラクターが気に入って、直ぐに原作も読みました。
事件の規模は大きくないものの、綿密に計算された構成や伏線の回収は本格的で読み応えがあり、何よりキャラクターが立っていて面白いのでお気に入りのシリーズです。
『クドリャフカの順番』はシリーズ3作目。待望の文化祭が始まったものの、手違いで大量発注してしまった文集「氷菓」をどうするかという問題。それに加えて、学内で発生した連続盗難事件。奉太郎たちはこの事件に絡めて文集の完売を目指すが…という話。
ABC殺人事件がモチーフ
クドリャフカの"順番"というだけあって、事件の順番がひとつのキーになっているのですが、これがアガサ・クリスティーのABC殺人事件をモチーフにしているようで面白いです。殺人は起きませんが、連続して発生する事件の真の狙いは何なのかを考えながら読むのが楽しい。
人に期待するということ
福部里志の言葉で印象に残ったのが、「自分に自信があるときは、期待なんて言葉を出しちゃあいけない」「期待っていうのは、諦めから出る言葉なんだよ」というもの。
この"期待"という言葉が『クドリャフカの順番』全体のキーワードになっていて、一連の事件を通して強いメッセージ性を感じさせてくれます。単に面白いだけじゃなく、読了後に考えさせられるところもこのシリーズの良いところかなと思います。
ちなみに、シリーズのおすすめは下記の順番です。ミステリー色が強いのは『愚者のエンドロール』。
『クドリャフカの順番』
『氷菓』
『愚者のエンドロール』
『ふたりの距離の概算』
『遠まわりする雛』